小野忠重 Ono Tadashige
明治42年<1909 >-平成2年<1990> 東京都出身
版画家。1924年、15歳の時に水彩画研究グループ・蒼原会に入会し、写生会などで本格的に絵を学びました。参加者のひとりである山口進の影響から、同時期に版画の制作も始めます。早稲田実業を卒業すると舞台美術の制作や自身も俳優として舞台に上るなど、演劇活動に熱中。当時の振興演劇の影響もあってかプロレタリア美術運動に傾倒しましたが、次第に版画の世界へと身を投じていきました。武藤六郎や柴秀夫らと版画の大衆化を掲げた新版画集団を結成し、創作版画誌『新版画』をグループで発行。また、連作版画「三代ノ死」を制作し、貧しい労働者の家族の悲劇を重苦しく描いています。やがて戦争が終わると、黒の画面を地として色版を刷り重ねていく“陰刻法”による独自のスタイルを展開。豊かなマチエールと重厚感の中で、都市の風景やそこで働く市民たちの様子を描き続けました。一方で版画研究者としても意欲的に活動。技法書と版画史を中心に数多くの著作を発表し、その資料価値は高く評価されています。
1930年 版画集『市街戦』発行
1932年 新版画集団結成。機関紙『新版画』創刊
1937年 造形版画協会設立
1956年 銀座・養清堂画廊にて個展開催
1957年 東京国際版画ビエンナーレ展出品
1979年 紫綬褒章を受章
1994年 小野忠重版画館開館
2009年 町田市立国際版画美術館にて「小野忠重展-昭和の自画像-」開催