師・歌川国芳の洒脱な画風とは異なる、幻想的かつ静謐な、翳のある世界観が魅力で、“最後の浮世絵師”とも呼ばれる絵師、月岡芳年の揃物が二作入荷しました。
月岡芳年「近世侠義傳」全36図
【近世侠義傳】
慶応元年-2年(1865-66)に制作された大判錦絵全36図の揃物で、版元は伊勢屋喜三郎。
講談で室井琴凌も「天保水滸伝」として読んだ、天保15年(1844)に大利根河原において繰り広げられた、飯岡助五郎、笹川繁蔵両陣営の博徒たちの決闘を実録的に描いたシリーズで、背景の略伝は、戯作者の山々亭有人(鏑木清方の父)が手がけています。
師・国芳の武者絵を参考にしたと思われる、構図や図柄が多く見られる。
【東錦浮世稿談】
講談を題材に、慶応3年-4年(1867-68)に制作された、大判錦絵全50図の揃物。
版元は錦盛堂、玉明堂、近江屋久助、増田屋銀次郎、山城屋甚兵衛の合梓。
講談をテーマにしているので、タイトルが書かれた枠も、講談で釈台を叩くのに使われる、張り扇の形をしています。
タイトル横にある開いた和本の中には、内容の簡単な説明が入れられていて、これは講談へ誘導するもので、今でいう「つづきはWebで」みたいな感じでしょうか。
その説明文は、明治期を代表する戯作者、仮名垣魯文が書いています。